ありがとうを語る〜大関東ギターエロス2013

  • 2013.11.17 Sunday
  • 02:40

2013.11.10 鈴木ナオトバンド in 渋谷O-WEST

森山良子の「さとうきび畑の唄」を聴いている。
ただひたすらに、ざわわざわわと繰り返されるあの曲だ。
ただ始めに言っておくと、別に僕は森山良子のファンというわけではない。森山良子の曲で知っている曲もほんの数曲程度だし、彼女の息子に至っても同じだ。
ただ、この「さとうきび畑の唄」だけは、この曲の中に登場する“ざわわ”という言葉があまりに耳に残るので、昔その数を数えてみたことがあるのだが、その数が実に六十六回にも及ぶことに驚いて、いったい何なんだろうこの曲は、と思い色々と考察を繰り返して聴いているうちに好きになってしまった、ただそれだけのことだ。
決してタイプではなかったけれど、一緒にいて楽しいので何度も呑みに行っているうちに好きになってしまった、そんな感覚に近いのかもしれない。
『さとうきび畑の唄』の作者である寺島尚彦氏によれば、この六十六回もの“ざわわ”のひとつひとつには、すべて意味があるのだという。

今年十一年振りに来日した元ビートルズのポールマッカートニーは、かつてリンゴ・スターのドラムについて、リンゴはビートルズの曲に関して、一度使ったフレーズは二度と叩くことのないドラマー、と称したことがあるが、森山良子の唄う「さとうきび畑の唄」の中の“ざわわ”も、よく注意して聴いてみると、ポールの言うリンゴのドラムと同じように、確かにすべて異なるアプローチと表現で唄われている気がしてくるから不思議だ。
けれどもこの十分にも及ぶ長い曲が、それでもずっとずっと流れていて欲しいと思わせるのは、この曲の中に柔らかくも深い哀しみや優しさを孕んでいるからなのだろう。

優しい曲や映画に出逢った時、僕は誰かに感謝したくなる。
その誰かとは、実在しない人間でもないし、自分とは関わりの薄い人間でもない。
自分が深く関わってきた人間に対しての、リアルな感情だ。
けれども哀しいことに、感謝したいその時にその人は自分の傍にいない、ということが人生の中に多々あり過ぎた。
そして渡すことの出来なかった言葉は、行くことも戻ることも出来ずにいつまでも宙に浮かんだまま、その存在意義を何度も見失った。
あの時、ありがとうのその一言が上手く言えなかった自分の心には、いったいどんなエゴが鎮座していたのだろう、と考える。
十度のさよならより、言うべきはずだった相手に言えなかった、たった一度の“ありがとう”の言葉は、さよならという事実よりもずっと重い。
そしてそのせいで、僕はいい歳をして年相応の哀しみの意味を、逞しさの裏に潜む痛みを自分が望む場所で見つけられないままでいる。
ありがとう、と言えなかったのは、それを言ってしまえば本当に終わってしまう気がしたからなのだろうね。
だから僕はいつも、じゃあねバイバイ、と言うだけで、その痛みを負うことを回避してきた。

時々、相手が自分のことを忘れてくれさえすればふらりと逢いに行けるのにな、と考える。
けれども、長い間置き去りにされた感謝の言葉は時と共にその有効期限を終え、ごめんなさい、という謝罪の言葉に形を変えてしまっていることが殆どで、有効期限を終えているということは賞味期限が過ぎているということでもあり、そんな賞味期限の過ぎた言葉は、仮に相手に伝えられたところで何の味わいも無い、すぐに吐き出されてしまう言葉に変わるのだ。
だから僕は思う。
生涯の中で心からのありがとうをどれだけ相手の正面を見て、目を見て言えたか。
それによって心の幸福度に大きな違いが出てくるように思う。

そう思うと俺はつまらないプライドと見栄と自我に惑わされている、未熟な青二才だとしか思えない。

でもね、先日十日に渋谷O-WESTで行われた大関東ギターエロス、というイベントライブでは、恥ずかしげもなく正直な感謝を述べたつもりだ。
ずっとサポートに入ってくれているギターの近沢博行くんにも、ベースの卓弥にも、ドラムの泰平くんにも、関係者各位の皆さまにも、共演者のみんなにも、そして目の前のお客さんにも、そして亡くなった友にも。

細かいことは抜きにして、あの日のライブはいいライブだったと思いたい。
だって以前のブログにも書いたように、上手くいっている時は周りのおかげ、上手くいっていない時は自分のせいなのだもの。
だから自分のせいにしたくないのではなくて、周りの人たちのおかげだ、って思いたいじゃない。
だからあの日のライブはいいライブだった、って、そう思いたい。
観に来てくれてありがとうじゃないんだよね。
観に来てくれたおかげで、いつも応援してくれているおかげでいいライブが出来たよありがとう、って言いたいんだよね。

胸がざわめいている、さとうきび畑の唄のように。
風は吹く。
北から南へ、南から北へ。
東から西へ、西から東へ。
風になりたいね、そして風にも吹かれたい。
本当に嬉しかったんだよ、本当に。
今年は色々とあり過ぎたから、あの日は余計に胸に堪えた夜だった。

一人で立てないわけじゃない。
でも周りの人たちがいなきゃ立つ気にもならない。
必要とされなければ部屋で一日中寝ているような、そんな人間なんだから。

このブログをどれくらいの人たちが読んでくれているのかは分からないけれども、あらためて言わせてね。

本当にどうもありがとう。
思い出作りのためにやっている音楽ではないけれども、あの夜の光景は一生忘れない。
メンバーのみんなも、共演者のみんなも、お客さんも。

正面を見て言いたいよ、本当にありがとうってね。
ワンダフル!ってね。
森山良子のざわわのように、ずっとずっと流れていて欲しいって、そんな風に思ってもらえるような歌うたいになりたい。
曲は変わらなくても思いは変わる。
だからライブで演奏するたびに成長してゆく。
だから同じ曲でも毎回違う表情で表現出来るような、そんな歌うたいになりたい。

それが何より一番の願いであり、一番の目標だ。

最後に、僕の隣で一年以上プレイし続けてくれている素晴らしきギタリスト、近沢くんのブログのリンクを貼っておく。

『近沢博行のキョシューを放て!〜大関東ギターエロス2013を終えて』


左から、Gu.近沢博行、B.高橋卓弥、Vo,Ag.鈴木ナオト、Dr.木本泰平


バンド仲間やお客さんたちが、打ち上げの席で誕生日サプライズしてくれた。
2013.10.31 新宿OREBAKOにて。



2013.11.10 渋谷O-WESTでのライブダイジェストムービーと来月ワンマンのメンバーのコメント動画

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