イメージを語る

  • 2014.02.07 Friday
  • 03:24


イメージを抱くことは大事だ。
それがしっかりとしたものであればあるほどもちろんいいに決まってるけど、
漠然としたものだってイメージがそこにあるのならそれでいい。
だってイメージ出来ないモノには本気で向かっていけないもの。

仕事だって恋愛だって、俺は三年後には年収一千万に届いているはずだ、とか、
俺はあの子とやがてはいい関係になっているはずだ、とか、
想像するだけなら幾らだって自由だし、
出合い頭や不意打ちのような事故的な出来事は特例だとしても、
そもそも想像すら出来ていないことが現実に起こる確率は、
想像している時のそれと比べれば、限りなく低い。
だからどんなハッタリ野郎に成り下がろうとも、口にしてしまえばいいのだと思う。
そうすれば、始めのうちは周りから冷ややかな目で見られる時期もあるかもしれないが、
そういえばあいつがあんなこと言ってたぜ、ちょっと声掛けてみようよ、
なんてひょんとしたことからチャンスが舞い込んで来たりして、
思わぬ成果をもたらしたりする。

ただこれは、思わぬ、ということでも無い。
タイミングそのものは外的にもたらされたモノであったとしても、
自分の中でイメージとしてずっと準備していたからこそ、
その瞬間が訪れた時に対応出来ることでもあるのだ。

昔、音響の派遣のアルバイトで泊まり込みでパシフィコ横浜を訪れた際、
アルバイト先の先輩と休憩がてら山下公園まで足を伸ばしておにぎりを食べている時、
その先輩は僕にこんなことを口にした。

「鈴木くん、釣りをする時に必要なモノって何だか分かる?」
「んー、そりゃ釣り竿にエサですよね」
僕は格段深く考えることなく、当然のように先輩に答える。
「うん、正解。でもね、釣り竿にエサだけじゃ魚は手に入らないんだよ」
「どういうことですか?」
僕がそう尋ねると、その先輩は煙草を大きく吸った後で、ふぅー、と再び大きく吐き出しながらこう言った。
「どんな立派な釣り竿があっても、どんな食い付きのいいエサを仕掛けても、いざそれを釣り上げた時に魚を保管するクーラーボックスを用意しておかなきゃ意味が無いよね。じゃなきゃその魚はどうする?きっと持ち帰って食べる頃には痛んじゃうよね」

あの時の先輩との会話は、あの頃からもう十五年以上の月日が経とうとしているのに未だ頭を離れることなく、
その時の山下公園の光景と共に時々僕の頭をふとよぎる。
昼下がりの何でもない、他愛のない会話だったけれども、
実に的を射る言葉を、実に賞味期限の長い言葉を、
まだ若輩者であった僕にもたらしてくれたと思う。

だから話は逸れたけれども、きっとイメージしておくということは、
つまりクーラーボックスを用意しておくことと同じように大事なことだと思うのだ。

好奇心も大事だよね、極端な言い方ではなく、
好奇心こそがすべて始まりの入り口だと思うもの。
あぁ、あの子可愛いなぁ、オッパイ大きいなぁ、裸になったらどんな感じなんだろうなぁ、
とかそういうことを書くといきなり陳腐になりがちだけれども、
男は空想の中でなら好きな女の子なんてとっく脱がしているし、
それはまったくもって健全な発想だ。
けれどもそうしたイメージをずっと頭に描いていると、
本当にその子のオッパイに辿り着けることもあったりして、
人生とはある程度のことならイメージした通りのことが実際に起こり得る、
玉手箱、いや、びっくり箱ようなモノだと感じている。

ただイメージも好奇心もほうっておけば泉のように勝手に湧いてくるわけではない。
イメージも好奇心も、日頃からしっかり意識をしてその思考を稼働させておかないと、
ハッと気付いた頃にはすでに枯れている。
例えば若い頃から趣味の一つも自ら持とうとしなかった人が大人になって親になり、
子供も大きくなって手が掛からなくなってきたからそろそろ趣味でも持とうかしら、
などと思ったところでそれはすでに手遅れなのだ。

なぜなら心が若い頃からイメージすることや好奇心を育むことを放棄してきたような人間が、
大人になっていきなり趣味を持とうとしても、
長い習慣の中で培われた無関心や怠惰といったモノはそうそう身から剥がすことは出来ないし、
そもそも大人になってからいきなり夢中になる趣味を手にした人を殆ど見たことがない。
趣味を持っている、というのは裏を返せば好奇心がそこにあるからであって、
趣味が道を開いてゆくのでなく、
好奇心こそが道を切り開いてゆく武器となるんだよね。

けれどそのイメージも、使い方を誤ると一転してダメージにもなる。

どこからが想像力が乏しい人、と言うのかはなかなか難しいところなのだが、
想像力の乏しい人と話をしていると、本意ではない部分で説明的になり過ぎてしまったり、
必要以上のことまで口にしたり言ってしまったりすることになり、
相手に対してはもちろん、自分に対しても失望してしまうことがある。
そしてそれを通り越してしまうとただの疲労感しか残らないわけなのだけど、
想像力があり過ぎてしまう人というのも困ったもので、
それはそれでただの迷惑でしかなかったりする。

生き物というその本質から、嫉妬心を抱かない人間などいない。
けれども嫉妬心があまりに強い人というのはそのイメージする力が強いが故に、
想像から誤解、そして暴走した妄信へとその形を変えて、
こちらが想像をもしないような展開に発展することが度々あるのだ。
そう、ダメージ。
イメージはダメージ。

彼と同棲中だというある知り合いの女のコは、飲み会で程よく呑んで気分良く帰宅した後で、
その飲み会に男がいた、というだけの理由で彼が嫉妬心に狂い、
口説かれたのか、ヤッたのか、と月も吹き飛ばされるかのような詰問の嵐が明け方まで続き、
揚句の果てには、こんなに好きなのに、こんなに好きなのに、と泣きじゃくるという。
同じ男として情けなすぎる。
そんな男は遥か彼方の成層圏までぶん殴りたくなる気分だ。
そんな軟弱極まりない男などとは早く別れてしまえ、と思う。
というか、言った。

男にせよ女にせよ、そんなことを言う人間に限って、
では飲み会にも行かずに傍にいてあげればそれ以上に充実した、
有意義な時間をもたらしてくれるのかといえば大低はそんなことはない。
同じ部屋にいても遊んでいても気の利いた話をするワケでもなく、
テレビを見たりゲームをしていたりボーッとしているだけで、
ただ彼女(彼)が傍にいるというだけで、自分が勝手に安心した気持ちに浸っているだけなのだ。

なので想像力の乏しい人や、極端に想像力が強い人というのは、
同時に現実を見る力や自分を客観視する力がひどく欠如していて、
それぞれ相手のために想像を働かせて思いやっているつもりかもしれないが、
実際には自己愛と自己顕示欲の為だけにエネルギーと想像を働かせることしか出来ていない。

いるでしょう。
あなたのことは私が一番知ってるのよ、
あなたのことが好きだし、本当に応援しているのよ、
と殊勝なことを口にしながらも、実際のところは自分を見つけてもらいたいだけで、
相手を愛すことよりも自分が一番に愛されることに一生懸命な、そんな人。

それもイメージと同じ。
人に愛されたら誰だって嬉しい。
けれどもその前に、自分から相手を愛することが出来たら
どんな歓びや豊かさを手に入れることが出来るのか、というイメージを抱けていない。
先述したように、嫉妬心を抱かない人間なんていない。
けれども愛されることだけを望むことは、
嫉妬心を超えてただの執着しか生まれない。
そして結果的にあっちへ行ったりそっちへ行ったり、
自分を愛してもらえる場所を探し歩く長い旅へ出ざるを得なくなるのだが、
やっと見つけたと思ったその拠り所は、
残念ながらそれは拠り所ではなくてただの酔い所だったりして、
酔いが覚めると再び長く小さな旅へ出ることを繰り返すのだ。

ずっと昔、プロ志望だと言うわりにはレッスンのたびにあまりに想像力も集中力も欠如した、
つまらない歌い方しか出来ない二十代の女のコがいて、
それが彼女の意図的なやり方ではないことを確かめた後で、

「長い文章を書くのなら幾つかのプロットを立てたり、映画を撮るのなら何十枚かの絵コンテを作成してイメージを固めていったり、単純に絵を描くにしてもデッサンを描いてみたりするように、歌を歌う時にはそれぞれの場面を頭に描いて、一曲を歌い終える頃に一枚の絵やドラマが完成するようなイメージを持って歌わなきゃ。上手い下手なんて今はどうだっていいんだから」
と言ったところ、

「私は絵を描いたことがないから分からないです」

と言われてガクッとしたことをよく覚えている。
そういうことを言っているんじゃないんだ、と。

よく観察してみよう。
服のセンスにせよ話のセンスにせよ、
趣味にせよ部屋のインテリアにせよ、
人との接し方にせよ言葉選びにせよ、
加えて持っているモノにせよセックスにせよ、
これはひどい、と思えるモノには全体を捉らえるイメージが欠如しているはずだ。

まぁ、それを私は(僕は)そんなモノには興味が無いので、
と言われてしまえばそれまでの話なのだけど、ね。

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