恋の番付理論

  • 2012.09.08 Saturday
  • 13:00


鉄は熱いうちに打て、との諺は誰もが知っている言葉だとは思うが、つくづく恋というのも、熱いうちに打たなければ成就するものもしなくなるな、と思う。
気持ちを伝える、という意味ではタイミングというのは実に大事だし、機が熟すまでじっと待つという忍耐力も必要ではあるが、じっとしているうちにどちらかが冷めてしまい、いざ打とうと思ったら打てなくなってしまった、ということが事実としてあるのは、普通に恋をしたことのある人なら、一度くらいは思い当たることがあるだろう。

恋は魔法である。言葉は麻薬である。だがその効果のほどはあまり長くは続かない。
賞味期限が薄れないうちに手を付けておかなければ、あっという間にその効能も薄れてしまい、アレ?私どうしてこんなにまでこの人に夢中になっていたんだろう、と目を覚ましてしまうのも時間の問題だ。

なのでやはり恋は熱いうちに打て、というのがおいらの持論でもあるのだが、どうも恋というのには、相撲の番付に似たからくりが潜んでいるような気が昔からしてならない。

相撲の世界では、どんな力士も横綱になることを夢に、それを目標として、強くなるための稽古に日々励んでいるものとは思うが、残念なことに横綱にカド番は無い。負け続ければあとはもう、引退しかないのである。
※ 角番(かどばん)とは、大相撲の本場所において負け越しをした場合に、その地位から陥落するという状況である。
その点、大関はどうであろう。大関は二場所続けて負け越せば関脇へと陥落、という取り決めはあるものの、負け続けたところで即引退、とはならない。どこまでも地位を落としたとしても、それは確かに難儀なことではあるが、力を取り戻すことで再び大関へと返り咲くことが出来るのだ。

ここで思うのは、強くはあったけれども結果的に短命に終わり、人々の記憶にあまり残ることなく引退してしまった横綱と、波瀾万丈な土俵人生を送りながらも息長く現役として活躍し、人々の記憶に深く刻まれた名大関とでは、どちらが力士として幸福だったのだろう、ということだ。

これを恋愛に置き換えて考えてみると、彼、もしくは彼女となった人は、晴れて横綱へと昇進を果たせることが出来るが、もうその後は引退しかないのであって(付き合っていた人と別れた後にも友だちでいれる人が時々いるけど、あの感覚は個人的にはちょっと分からない)ただの勢いで横綱になったものの、横綱になった途端に弱くなっただとか、横綱になった途端に偉そうになっただとか、部屋のおかみさんをドメスティックバイオレンスばりにぶん殴って廃業になったりだとか、横綱になったからといって、幸せなことばかりが待ち受けているワケではないのである。

その点、今にも付き合いそうで付き合わない、友達以上恋人未満、もしくは永遠の恋人、と呼べるような存在は、微妙な立場、つまりカド番としての場所で仮に負け越して関脇に陥落してしまったとしても、またアピールすれば大関へと返り咲くことも出来るし、そもそも友達以上恋人未満の関係にドメスティックバイオレンスは存在しない。つまり横綱にまでならなくとも、名大関としていつまでもその人の心に刻まれることが出来るのである。

まぁこんなことを考えて慎重になりすぎてしまったが故に、業を煮やして去っていってしまった女の子たちもきっといたのだろうし、腐っても鯛、腐っても巨人、三度の飯より横綱になりたい、というのが本当の所なのだろうが、急いで横綱へと昇進させてしまったがために、ひどく短命な横綱に終わってしまうケースもあったりするわけだ。

鉄を熱いうちに打たなかったばかりに形が歪み、切れ味が薄れてしまおうと、それはそれで味わいがあり、何よりも不必要に人を傷付けない。
けれども鉄を熱いうちに打てばその切れ味は鋭いが、時に必要ではない所で人を傷付けてしまうものだ。

目指すのは短命の横綱か、それとも名大関か。
晴れて横綱になったのなら、とことん強い横綱に。
誰だって横綱になりたい気持ちは同じだもんね。

ちなみにおいらは、いつか横綱になるなると言われ続けて三度も綱取りに失敗した高田みずえの夫であり、緑の回しで昭和の角界を支えた名大関、若嶋津が大好きだった。
(往年の相撲ファンでもない限り、まず誰も分からないだろうな)

それでも切れ味を求めたいのなら、やはり恋は熱いうちに打つべきである。
魔法も、一生解けることがなければそれはもはや魔法ではない。
ただしちょっとした力でもスパッと切れるのでご用心を。

火は点けることより消すことのほうが難しいのだ、ということだけは肝に命じて。

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